絶頂から絶望へ
December 2022
「うわっ…!あーこれは…。」
医師から漏れた声。
その時、私は内診台の上にいた。まさかという気持ちとともにもうすぐ手に入れるはずだった永年の夢が脆くも崩れ落ちていった瞬間だった。
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子どもの頃から「家」に対して特別な思い入れがある。
それは私の育った家庭や住環境そのものに起因していると思っている。私にとって「家」は幸福の象徴であり、そんな熱い想いをぶつけるために大学では建築学を専攻したw(でも仕事は畑違いのもの)。
家族もキャリアも手に入れて順風満帆(だと思っていた)な生活を送っていた頃、やっと念願の「家」を手に入れるチャンスが巡ってきた。
まさに幸せの絶頂。
「私の理想」を詰め込んだ暑苦しいメールを夜な夜な送りつけハウスメーカーの営業さんを辟易させていたのがこの頃w
そしてもうすぐ土地契約!というときによぎった一抹の不安。
それは3ヶ月くらい前から続くおりもの異常。
とにかく大量に出る。おりものシートでは間に合わず昼用ナプキンを常時使っていた。
たまにごく少量の不正出血もある。
しかし一度婦人科で診てもらって何もなかった。
でも一向に治らない…。
念のため別の婦人科を受診してみるか。
ローンも背負うことだし…(ペアローン)
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と軽い気持ちで受診した先で起こったのが冒頭のシーン。
もともとおりもの異常で受診したので、性病の検査をしてみようという話になっていた。
しかし、医師は一目見て「90%子宮頚がんだと思うから性病の検査はやめるね。」
とサラッと言い放ったのだ。
何の心の準備もないうちに告知された私は何かの感情が浮かぶ間も無く、止血のための綿(?)をぎゅうぎゅうに詰め込まれていた。内診でかなり出血してしまったので強めの圧迫が必要とのことだった。
告知されたときの感情はうまく思い出せない。
でもこのぎゅうぎゅう詰めにされる感触と処置の光景は未だに脳裏に焼き付いている。
そしてそれを思い出す時、決まって涙がこぼれ落ちてしまう。
内診が終わって診察椅子に座ると、まるで身の潔白を証明するように医師に必死に説明する私。
一年以内に子宮頚がんの検査を受けていること、少し前に別の婦人科で診てもらい異常はなかったこと。
しかし医師はそんな私を憐れむように一瞥しただけで、「昨年の細胞診ではNILMだったが子宮頚がんの可能性が高い」と転院先への紹介状にさらさらと書き加えていた。