転院先の選択
December 2020
子宮頚がんの告知を受けたクリニックではガンの治療ができないためすぐさま転院が必要だった。
「このあたりの大きな病院でかかりつけにしているところはありますか?なければ一番近いここでいいかな。」
と提示された病院はなんとなくよい印象を持っていないところだった。転院先で治療することになるのだからこの選択が重要になるのは間違いないだろう。しかしそれを決定できるだけの判断材料を私は持ち合わせていない。
………。
数秒後。
医師はどこかあきらめたように、机の引き出しの中から一枚のパンフレットを取り出し、返答に詰まる私の目の前に差し出した。それはさっき挙げてくれた「近隣の病院リスト」には入っていないところだった。
「手術するならここが一番おすすめできる病院です。腹腔鏡手術の名医もいるし。」
と言いながら「医師が選ぶ名医」のようなタイトルの本だったか資料だったかを見せてくれた。
決め手のなかった私は迷いながらも医師の言葉を信じるしかなかった。
折しも時は年末。今年最後の診察日。
医師はそのおすすめ病院に顔がきくようでその日の午後診に予約を捻じ込んでくれた。